歯周病と全身疾患
歯周病は口の中だけの疾患ではありません。
歯周病菌が体に入り込まないように免疫反応が起こり、炎症反応を起こします。
菌が増殖し免疫細胞が防御しきれずに菌が体内に侵入してしまったり、慢性的に炎症がある事で、様々な全身疾患を引き起こしたり、すでにある疾患を悪化させる事が明らかとなってきました。
関係する全身疾患はこんなにあります。
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
- 感染性心内膜炎
- 動脈硬化
- 誤嚥性肺炎
- 糖尿病
- 早産
- 低体重児出産
それぞれの全身疾患はどのように関係するのでしょうか?
歯周病菌が体内に侵入しないように免疫細胞が活躍しますが、治療をせずに放置していると菌が増加の一途をたどり、体内に侵入してしまいます。
菌は血行にのって全身に回ります。
1. 脳梗塞
歯周病菌が脳血管に住み着くと脳梗塞の原因となります。
菌は血管の内壁にアテローム性プラークを形成し、血管に炎症を引き起こして、動脈硬化を引き起こしたり、血管を狭めて血液循環を悪くします。
脳血管が詰まったり、破裂してしまうと脳卒中になってしまうのです。
非出血性の脳卒中になる危険性は、歯周病患者のほうが歯肉が健康な人よりも2.8倍高くなると報告されています。
2. 心筋梗塞、感染性心内膜炎、動脈硬化
歯周病菌が心臓に住み着くと心筋梗塞や感染性心内膜炎、狭心症を引き起こす原因になります。
もともと血管に動脈硬化部分があるとそこでアテローム性プラークを形成して動脈硬化を悪化させます。
これは心臓に限ったことではなく、体中の血管に同じ事が起こります。
血管にアテローム性プラークが蓄積するとそこで炎症性物質や血管細胞の増殖が起きて動脈硬化が起こります。
心臓内に入り込むと、心臓が弁や内膜に取り付いて炎症を起こします。
これが、感染性心内膜炎です。
このように歯周病と心臓病、脳卒中には深く関係しているのです。
3. 誤嚥性肺炎
高齢者の場合、嚥下機能が低下しているのでものを飲み込む際にまちがって気管のほうに入り込んでしまう事があります。
元気な方であれば、咳が出て肺に入り込まないように出すことができますが、高齢者はうまくできないため、歯周病菌がたくさん含まれたものが肺に入ったままになってしまいます。
これが肺炎を引き起こすのです。
ですから日常的に口の中を清潔に保ち、菌が少ない状態でいなくてはいけません。
4. 糖尿病
糖尿病も歯周病も原因は違えど、両者とも生活習慣病です。
糖尿病になると全身の免疫機能が落ちますから、歯周病がかなり悪化します。
糖尿病の合併症と言っても過言ではありません。
糖尿病との関係はお互いがお互いを悪化させるような関係性です。
糖尿病の方は血液中に高血糖ですので歯周組織のコラーゲン繊維が減少してしまいます。そのため組織の破壊が進み、歯周病が悪化します。
また、歯周病の炎症が糖尿病を悪化させます。放置してしまうと、口の中に慢性炎症がある状態となります。炎症物質はインスリン抵抗性を高めます。さらに、炎症性物質のCRPは肝臓の働きを低下させ、糖(ブドウ糖)を分解する能力を低下させていしまいます。インスリンがうまく機能しないと、血糖値のコントロールができずに血糖値が上昇し、糖尿病をさらに悪化させます。
5. 早産、低体重児出産
歯周病の炎症で産生される炎症性物質であるプロスタグランジンは陣痛促進剤と同じ成分です。慢性炎症がある事で自分が陣痛促進剤を生み出しているようなものです。
妊娠中に歯周病を放置すると女性ホルモンの作用により、悪化します。悪化すると早産につながるプロスタグランジンが産生されます。このように妊娠、歯周病がお互いに悪化のサイクルを生み出してしまうのです。
また、歯周病菌が血管を通じて羊水に入り、胎児の成長に影響して低体重児となるという報告もされています。